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・或るピアニストとその人が演奏した曲のこと その1

2008年11月07日 09:06

 タイトルから、大変に親しいピアニストのことかと多く方の誤解を招くかもしれないが、そんなことではない。単なる私のノスタルジ-のようなもので、くどくも、繋がっている二つの話がある。

 最初の話の舞台は、35年前の1973年、ジュネーブのヴィクトリア・ホール。ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮のスイス・ロマンド管弦楽団の定期演奏会。その日は、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリが独奏者として登場し、2曲弾いた。

 ミケランジェリは録音嫌いで有名だったから、彼のレーコドを聞く機会は殆ど無かったという記憶がある。それだけに、彼の有名なミケランジェリを最前列の席から眼前のステージに見上げたときの胸騒ぎは、今も鮮やかに思い出す。(若い頃は、こういう気分を味わっていたのだな!) このピアニストが私の記憶領域に入り込んだ最初の機会が、当の演奏会だったということになる。

 実はこのミケランジェリの演奏会で、後にも先にもこれ一度しか経験したことがない出来事に遭遇したのである。10歳代後半から今まで長年コンサートを聴きに出かけているが、それは想像すらしたことがない事件であり、それ以降も未だ経験なし。
 その経験とそれに繋がる話を書き留めることになるが、いつもに増して纏まりがない記録になるのは必死だから、今回は、35年前の出来事だけを記して、このブログの第一部とする。

 ミケランジェリの弾く一曲目は、ベートーヴェンのピアノソナタ第3番ハ長調 OP.2-3。最前列で鍵盤が見える位置という晴れがましい席で、出だしの音を待って緊張していた。

 最初の和音が叩かれ時、間髪を入れずに、最前列かすぐ後ろの列かどこかで、堅いもの(金属?)が堅い床に落ちたと思われる ゴツン!(カツン!) という相当に大きな音がした。 ゴツン! はピアノの音と同じように反響の具合もすばらしく、会場に響き渡った。
 その音は、あたかも最初の和音を瞬間的に引き継いだか、あるいは次の和音に瞬時重なったか、判断のつきにくいタイミングだった。私の受けた印象では、ゴツン! と次の和音とは重ならなかった。

 なんとミケランジェリは、最初の和音だけを弾いて、次に進むのを止めたのである。貼り付けた楽譜の高音部・最初の p の2分音符の和音が響いている余韻の最後(二拍目)と ゴツン! は瞬間的に重なり、ミケランジェリの指は次の16分音符にまで進んでいない。その状態で、ミケランジェリは演奏を中止した。

 会場は、静まりかえった。異様なほどの静寂であったように思う。ミケランジェリは、鍵盤を見つめたまま両手をゆっくりと膝に持って行った。そしてキりキリとした緊迫感が会場に満ち私の緊張も極みに達したとき、ミケランジェリの両手は、再び曲の最初から鍵盤を叩き始めた。ミケランジェリの気持ちの切り替え・精神統一の時間は10秒か15秒か20秒だったか。

 アレグロ・コン・ブリオの明るい旋律・リズムとミケランジェリの表情豊かなテンポの演奏は、会場の一種異様な空気を素早く和らげる効果があった。曲が終了した時は、会場はさわやかな雰囲気に満ちていた。

 この劇的な状況を経験したおかげで、私はそれまで知らなかったベートーヴェンのピアノソナタ第3番を知ったし、最初の一、二小節らしきものをなんかの拍子に思い浮かべることが出来るようになった。

 このブログの第一部ははここまで。

《 「ベートーヴェンのピアノソナタ第3番ハ長調 OP.2-3」の冒頭の部分。》                  

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